F分布の期待値・分散を確率密度関数を用いて導出

[公開日]2017/07/26 [カテゴリー]F分布 Written by  HKRN

確率密度関数\(f(z) = \frac{(\frac{n}{m})^{\frac{n}{2}}}{B(\frac{n}{2}, \frac{m}{2})} \frac{z^{\frac{n}{2}-1}}{(1+\frac{n}{m}z)^{-\frac{n+m}{2}}}\)
期待値\(E(Z) = \frac{m}{m-2} \)
分散\(V(Z) = \frac{2m^{2}(n+m-2)}{n(m-2)^2 (m-4)} \)

当ページはF分布の期待値(平均)・分散について、確率密度関数を利用した導出過程(証明)を記しています。

F分布の期待値と分散は、今回紹介する方法の他にも、カイ二乗分布を用いた方法もあります。それは、F分布に従う確率変数が、2つの互いに独立なカイ二乗分布に従う確率変数をそれぞれの自由度で割ったものの比で表されることを利用するものです。

その導出法については、F分布の期待値・分散をカイ二乗分布を用いて導出をご参照ください。

※お使いの端末によっては、長い数式が右側にはみ出す場合がございます。縮小や右にスクロール、端末を横にするの動作などで解決する場合がございますので、お試しください。

 
 

ベータ関数とガンマ関数、F分布の密度関数

導出の前に、ベータ関数の定義とガンマ関数の性質を紹介させてください。これは、F分布の期待値と分散を確率密度関数を用いて求める際に必要となります。

ベータ関数の定義
 

\(B(a, b) = \int_0^1 t^{a-1}(1-t)^{b-1} dt  \)

 
 
ガンマ関数の性質
 

\(\Gamma(a+1) = a \Gamma(a)\)

 
 
さらに、ベータ関数とガンマ関数について以下のような関係式が成り立ちます。
 
 
 
ベータ関数とガンマ関数の関係

\(B(a, b) = \frac{\Gamma(a) \Gamma(b)}{\Gamma(a+b)}\)

また、F分布の確率密度関数は以下のように定義できます。

\(X, Y\)がそれぞれ自由度\(n, m\)のカイ二乗分布に従う互いに独立な確率変数とすると、\(Z = \frac{\frac{X}{n}}{\frac{Y}{m}}\)は自由度\(n, m\)のF分布に従います。

この時、\(Z\)の確率密度関数を\(f(z)\)とおくと、\(f(z)\)は以下の様に表せます。

F分布の確率密度関数

\(f(z) = \begin{cases} \frac{(\frac{n}{m})^{\frac{n}{2}}}{B(\frac{n}{2}, \frac{m}{2})} \frac{z^{\frac{n}{2}-1}}{(1+\frac{n}{m}z)^{\frac{n+m}{2}}} & (z > 0) \\ 0 & (z \leq 0)\end{cases} \)

F分布の確率密度関数の導出については、「F分布の確率密度関数をカイ二乗分布を用いて導出」をご参照ください。

期待値の導出(証明)

まずは\(Z\)の期待値\(E(Z)\)を求めます。\(E(Z)\)については期待値の定義(連続型確率変数の場合)より、次のように求められます。

\(\begin{eqnarray*}  E(Z) &=& \displaystyle \int_0^\infty z f(z) dz \\ &=& \frac{(\frac{n}{m})^{\frac{n}{2}}}{B(\frac{n}{2}, \frac{m}{2})} \int_0^\infty \frac{z^{\frac{n}{2}}}{(1+\frac{n}{m}z)^{\frac{n+m}{2}}} dz \end{eqnarray*}\)

info

ここで、\(\frac{1}{1+\frac{n}{m}z} = u\)とおくと

\(z = \frac{m}{n}(u^{-1} - 1) \)

上式を\(u\)について微分すると

\(\frac{dz}{du} = -\frac{m}{n}u^{-2} \)

となります。上記を\(E(Z)\)の式に代入すると

\(\begin{eqnarray*} E(Z) &=& \displaystyle \frac{(\frac{n}{m})^{\frac{n}{2}}}{B(\frac{n}{2}, \frac{m}{2})} \int_1^0 (\frac{m}{n}(u^{-1} - 1))^{\frac{n}{2}} u^{\frac{n+m}{2}} (-\frac{m}{n}u^{-2}) du \\ &=&  \displaystyle \frac{\frac{m}{n}}{B(\frac{n}{2}, \frac{m}{2})} \int_0^1 (u^{-1} - 1)^{\frac{n}{2}} u^{\frac{n+m}{2} - 2} du \\ &=& \displaystyle \frac{\frac{m}{n}}{B(\frac{n}{2}, \frac{m}{2})} \int_0^1 (1-u)^{\frac{n}{2}} u^{\frac{m}{2} - 2} du \end{eqnarray*}\)

info

ここで、3行目の\(u\)の積分式について、次のように変形を行うことができます。

\(\begin{eqnarray*} \int_0^1 (1-u)^{\frac{n}{2}} u^{\frac{m}{2} - 2} du &=& \displaystyle \int_0^1 u^{\frac{m}{2}-1-1} (1-u)^{\frac{n}{2}+1-1} du \\ &=& \displaystyle B(\frac{m}{2}-1, \frac{n}{2}+1) \end{eqnarray*}\)

つまり、ベータ関数の定義と一致することが言えます。このことから、\(E(Z)\)は

\(E(Z) = \frac{\frac{m}{n}}{B(\frac{n}{2}, \frac{m}{2})} B(\frac{m}{2}-1, \frac{n}{2}+1) \)

と表せます。さらに、ベータ関数とガンマ関数の関係式より

\(E(Z) = \frac{\frac{m}{n}}{B(\frac{n}{2}, \frac{m}{2})} \frac{\Gamma(\frac{m}{2}-1)\Gamma(\frac{n}{2}+1)}{\Gamma(\frac{m}{2}+\frac{n}{2})} \)

となります。最後にガンマ関数の性質を用いることで\(E(Z)\)は以下の形に求まります。

\(\begin{eqnarray*} E(Z) &=& \displaystyle \frac{\frac{m}{n}}{B(\frac{n}{2}, \frac{m}{2})} \frac{\frac{1}{\frac{m}{2}-1}\Gamma(\frac{m}{2})\frac{n}{2}\Gamma(\frac{n}{2})}{\Gamma(\frac{m}{2}+\frac{n}{2})} \\ &=& \displaystyle \frac{m}{m-2} \frac{1}{B(\frac{n}{2}, \frac{m}{2})} \frac{\Gamma(\frac{m}{2})\Gamma(\frac{n}{2})}{\Gamma(\frac{m}{2}+\frac{n}{2})} \\ &=& \displaystyle \frac{m}{m-2} \frac{\Gamma(\frac{n}{2}+\frac{m}{2})}{\Gamma(\frac{m}{2})\Gamma(\frac{n}{2})} \frac{\Gamma(\frac{m}{2})\Gamma(\frac{n}{2})}{\Gamma(\frac{m}{2}+\frac{n}{2})} \\ &=& \displaystyle \frac{m}{m-2} \end{eqnarray*}\)

以上より、F分布の期待値を証明することができました。

分散の導出(証明)

次に\(Z\)の分散を求めます。分散の性質より

\(Var(Z) = E(Z^2) - E(Z)^2 \)

と表せます。\(E(Z)\)は先ほど求めましたので

\(Var(Z) = E(Z^2) - \frac{m^2}{(m-2)^2}\)

となりますね。では\(E(Z^2)\)を求めます。

\(\begin{eqnarray*} E(Z) &=& \displaystyle  \int_{-\infty}^\infty z^2 f(z) dz \\ &=& \displaystyle \int_0^\infty z^2 \frac{(\frac{n}{m})^{\frac{n}{2}}}{B(\frac{n}{2}, \frac{m}{2})} \frac{z^{\frac{n}{2}-1}}{(1+\frac{n}{m}z)^{\frac{n+m}{2}}}dz \\ &=& \displaystyle \frac{(\frac{n}{m})^{\frac{n}{2}}}{B(\frac{n}{2}, \frac{m}{2})} \int_0^\infty \frac{z^{\frac{n}{2}+1}}{(1+\frac{n}{m}z)^{\frac{n+m}{2}}} dz \end{eqnarray*}\)

info

先ほどと同じく、ここで\(\frac{1}{1+\frac{n}{m}z} = u\)とおくことで

\(z = \frac{m}{n}(u^{-1} - 1) \)

上式を\(u\)について微分すると

\(\frac{dz}{du} = -\frac{m}{n}u^{-2} \)

となるので、\(E(Z^2)\)に代入すると

\(\begin{eqnarray*} E(Z^2) &=& \displaystyle \frac{(\frac{n}{m})^{\frac{n}{2}}}{B(\frac{n}{2}, \frac{m}{2})} \int_1^0 (\frac{m}{n}(u^{-1}-1))^{\frac{n}{2}+1} u^{\frac{n+m}{2}} (-\frac{m}{n}u^{-2}) du \\ &=& \displaystyle \frac{\frac{m^2}{n^2}}{B(\frac{n}{2}, \frac{m}{2})} \int_0^1 (u^{-1} - 1)^{\frac{n}{2}+1} u^{\frac{n+m}{2} - 2}du \\ &=&  \displaystyle \frac{\frac{m^2}{n^2}}{B(\frac{n}{2}, \frac{m}{2})} \int_0^1 (1-u)^{\frac{n}{2}+1} u^{\frac{m}{2}-3} du \end{eqnarray*}\)

info

ここで、3行目の\(u\)の積分式についてベータ関数の定義に一致させるように式変形をします。

\(\begin{eqnarray*} \int_0^1 (1-u)^{\frac{n}{2}+1} u^{\frac{m}{2}-3} du &=& \displaystyle \int_0^1 u^{\frac{m}{2}-2-1} (1-u)^{\frac{n}{2}+2-1} du \\ &=& \displaystyle B(\frac{m}{2}-2, \frac{n}{2}+2) \end{eqnarray*}\)

上式を代入させることで

\(E(Z^2) = \frac{\frac{m^2}{n^2}}{B(\frac{n}{2}, \frac{m}{2})} B(\frac{m}{2}-2, \frac{n}{2}+2) \)

となります。ここでベータ関数とガンマ関数の関係式を用いて

\(E(Z^2) = \displaystyle \frac{\frac{m^2}{n^2}}{B(\frac{n}{2}, \frac{m}{2})} \frac{\Gamma(\frac{m}{2}-2)\Gamma(\frac{n}{2}+1)}{\Gamma(\frac{m}{2}+\frac{n}{2})} \)

さらにガンマ関数の性質を用いることで、\(E(Z^2)\)は以下のように求まります。

\(\begin{eqnarray*} E(Z) &=& \displaystyle  \frac{\frac{m^2}{n^2}}{B(\frac{n}{2}, \frac{m}{2})} \frac{(\frac{1}{\frac{m}{2}-1})(\frac{1}{\frac{m}{2}-1})\Gamma(\frac{m}{2})(\frac{n}{2}+1)\frac{n}{2}\Gamma(\frac{n}{2})}{\Gamma(\frac{m}{2}+\frac{n}{2})} \\ &=& \displaystyle \frac{m^2 (n+2)}{n(m-2)(m-4)} \frac{1}{B(\frac{n}{2}, \frac{m}{2})} \frac{\Gamma(\frac{m}{2})\Gamma(\frac{n}{2})}{\Gamma(\frac{m}{2}+\frac{n}{2})} \\ &=& \displaystyle \frac{m^2 (n+2)}{n(m-2)(m-4)} \frac{\Gamma(\frac{n}{2}+\frac{m}{2})}{\Gamma(\frac{n}{2})\Gamma(\frac{m}{2})} \frac{\Gamma(\frac{m}{2})\Gamma(\frac{n}{2})}{\Gamma(\frac{m}{2}+\frac{n}{2})} \\ &=& \displaystyle \frac{m^2 (n+2)}{n(m-2)(m-4)} \end{eqnarray*} \)

したがって、この値を\(Var(Z)\)の式に代入すると

\(\begin{eqnarray*} Var(Z) &=& \displaystyle \frac{m^2 (n+2)}{n(m-2)(m-4)} - \frac{m^2}{(m-2)^2} \\ &=& \frac{m^2 \{ (n+2)(m-2)-n(m-4)\} }{n(m-2)^2 (m-4)} \\ &=& \frac{2m^2 (n+m-2)}{n(m-2)^2 (m-4)} \end{eqnarray*} \)

となります。以上よりF分布の分散を証明することができました。

  • スポンサーリンク

  • コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

    CAPTCHA