F分布の期待値・分散をカイ二乗分布を用いて導出

[記事公開日]2017/07/27[最終更新日]2017/09/18 [カテゴリー]F分布 Written by  HKRN

確率密度関数\(f(z) = \frac{(\frac{n}{m})^{\frac{n}{2}}}{B(\frac{n}{2}, \frac{m}{2})} \frac{z^{\frac{n}{2}-1}}{(1+\frac{n}{m}z)^{-\frac{n+m}{2}}}\)
期待値\(E(Z) = \frac{m}{m-2} \)
分散\(V(Z) = \frac{2m^{2}(n+m-2)}{n(m-2)^2 (m-4)} \)

当ページはF分布のカイ二乗分布からの期待値(平均)・分散の導出過程(証明)を記しています。

F分布に従う確率変数の平均・分散の導出については様々な方法がありますが、ここで紹介する導出方法は、F分布に従う確率変数が2つの互いに独立なカイ二乗分布に従う確率変数をそれぞれの自由度で割ったものの比で表されることを利用した導出方法を紹介します。

F分布の確率密度関数から導出する方法については F分布の期待値・分散を確率密度関数を用いて導出をご参照ください。

カイ二乗分布については、カイ二乗分布のわかりやすいまとめにて、まとめました。

※お使いの端末によっては、長い数式が右側にはみ出す場合がございます。縮小や右にスクロール、端末を横にするの動作などで解決する場合がございますので、お試しください。

 
 

導出に利用するガンマ関数について

まずはF分布の期待値と分散をカイ二乗分布を用いて求める際に必要となるガンマ関数のの性質を紹介します。

 
 
ガンマ関数の性質①
 

\(\Gamma(a) = \int_0^\infty t^{a-1} \mathrm{e}^{-t} dt\)

 
 
ガンマ関数の性質②
 

\(\Gamma(a+1) = a \Gamma(a)\)

期待値(平均)の導出(証明)

\(X, Y\)がそれぞれ自由度\(n, m\)のカイ二乗分布に従う互いに独立な確率変数とし、\(Z = \frac{\frac{X}{n}}{\frac{Y}{m}}\)が自由度\(n, m\)のF分布に従うとします。

まず、Zの期待値を考えます。

\(\begin{eqnarray*} E(Z) &=& \displaystyle E(\frac{\frac{X}{n}}{\frac{Y}{m}}) \\ &=& \displaystyle E(\frac{X}{n})E(\frac{1}{\frac{Y}{m}}) \\ &=& \displaystyle \frac{m}{n}E(X)E(\frac{1}{Y}) \end{eqnarray*}\)

ここまでの式変形は、期待値の性質を利用して行いました。期待値の性質については、「期待値の定義・性質・計算例」をご参照ください。

次に、\(E(X)\)と\(E(\frac{1}{Y})\)を考えます。\(X\)は自由度\(n\)のカイ二乗分布に従う確率変数なので、

\(E(X) = n\)

となります。カイ二乗分布の期待値の導出について、は「カイ二乗分布の期待値と分散の導出」、「積率母関数を用いたカイ二乗分布の期待値・分散の導出」などをご参照いただければと思います。

次に\(E(\frac{1}{Y})\)を求めます。こちらについては、確率密度関数を用いた導出方法に準拠して求めます。

\(\begin{eqnarray*} E(\frac{1}{Y}) &=& \displaystyle \int_0^\infty \frac{1}{y} f(y) dy \\ &=& \displaystyle \int_0^\infty \frac{1}{y} \frac{1}{\Gamma(\frac{m}{2})} (\frac{1}{2})^{\frac{m}{2}} y^{\frac{m}{2}-1} \mathrm{e}^{-\frac{y}{2}} dy  \\ &=& \displaystyle \frac{1}{\Gamma(\frac{m}{2})} (\frac{1}{2})^{\frac{m}{2}} \int_0^\infty y^{\frac{m-2}{2}-1} \mathrm{e}^{-\frac{y}{2}}dy \\ &=& \displaystyle \frac{1}{\Gamma(\frac{m}{2})} (\frac{1}{2})^{\frac{m}{2}} \int_0^\infty 2^{\frac{m}{2}-2} w^{\frac{m-2}{2}-1} \mathrm{e}^{-w} 2 dw \\ &=& \displaystyle \frac{1}{\Gamma(\frac{m}{2})} \frac{1}{2} \int_0^\infty w^{\frac{m-2}{2}-1} \mathrm{e}^{-w} dw \end{eqnarray*}\)

info

ちなみに4行目において、\(\frac{y}{2} = w\)とおいています。ここで5行目の\(w\)の積分式について、ガンマ関数の性質①を利用して次のように式変形を行います。

\(\int_0^\infty w^{\frac{m-2}{2}-1} \mathrm{e}^{-w} dw = \Gamma(\frac{m-2}{2}) \)

上記にくわえて、ガンマ関数の性質②を利用することで、最終的に\(E(\frac{1}{Y})\)は以下の値となります。

\(\begin{eqnarray*} E(\frac{1}{Y}) &=& \displaystyle \frac{1}{2} \frac{\Gamma(\frac{m-2}{2})}{\Gamma(\frac{m}{2})} \\ &=& \displaystyle \frac{1}{2} \frac{\Gamma(\frac{m-2}{2})}{(\frac{m-2}{2})\Gamma(\frac{m-2}{2})} \\ &=& \displaystyle \frac{1}{2} \frac{1}{\frac{m-2}{2}} = \frac{1}{m-2} \end{eqnarray*}\)

以上より\(E(X)\)と\(E(\frac{1}{Y})\)の値を\(E(Z)\)に代入すると次のように求まります。

\(\begin{eqnarray*} E(Z) &=&  \displaystyle \frac{m}{n}E(X)E(\frac{1}{Y}) \\ &=& \displaystyle \frac{m}{n} \times n \times \frac{1}{m-2}\\ &=& \displaystyle \frac{m}{m-2} \end{eqnarray*}\)

よって、F分布の期待値を導出することができました。

分散の導出(証明)

次にZの分散を求めます。ここで、Zの分散\(Var(Z)\)について

\(Var(Z) = E(Z^2) - (E(Z))^2 \)

と表すことができます。これは分散の性質を利用したものです。この性質の証明については、「例題で理解する分散の意味と求め方」をご参照ください。

\(E(Z)\)については先ほど求めましたので、\(E(Z^2)\)を求めます。

\(\begin{eqnarray*} E(Z^2) &=& \displaystyle E(\frac{\frac{X^2}{n^2}}{\frac{Y^2}{m^2}}) \\ &=& \displaystyle \frac{m^2}{n^2}E(X^2)E(\frac{1}{Y^2}) \end{eqnarray*} \)

ここに、\(E(X^2)\)は、\(X\)は自由度\(n\)のカイ二乗分布に従う確率変数なので、

\(E(X^2) = n^2 + 2n \)

となります。

次に、\(E(\frac{1}{Y^2})\)を求めます。

\(\begin{eqnarray*} E(\frac{1}{Y^2}) &=& \displaystyle \int_0^\infty \frac{1}{y^2} f(y) dy \\ &=& \displaystyle  \int_0^\infty \frac{1}{y^2} \frac{1}{\Gamma(\frac{m}{2})} (\frac{1}{2})^{\frac{m}{2}} y^{\frac{m}{2}-1} \mathrm{e}^{-\frac{y}{2}} dy \\ &=& \displaystyle \frac{1}{\Gamma(\frac{m}{2})} (\frac{1}{2})^{\frac{m}{2}} \int_0^\infty y^{\frac{m-2}{2}-2} \mathrm{e}^{-\frac{y}{2}} dy \\ &=& \displaystyle \frac{1}{\Gamma(\frac{m}{2})} (\frac{1}{2})^{\frac{m}{2}} \int_0^\infty 2^{\frac{m}{2}-3} w^{\frac{m-2}{2}-2} \mathrm{e}^{-w} 2dw \\ &=& \displaystyle \frac{1}{\Gamma(\frac{m}{2})} (\frac{1}{2})^{\frac{m}{2}} 2^{\frac{m}{2}-2} \int_0^\infty w^{\frac{m-4}{2}-1} \mathrm{e}^{-w} dw \end{eqnarray*}\)

info

こちらも同様に4行目において\(\frac{y}{2} = w\)とおきました。また、5行目の\(w\)の積分式についてガンマ関数の性質①より

\(\int_0^\infty w^{\frac{m-4}{2}-1} \mathrm{e}^{-w} dw = \Gamma(\frac{m-4}{2}) \)

と表すことができます。上式を\(E(\frac{1}{Y^2})\)に代入し、さらにガンマ関数の性質②を用いることで

\(\begin{eqnarray*} E(\frac{1}{Y^2}) &=& \displaystyle \frac{1}{\Gamma(\frac{m}{2})} (\frac{1}{2})^2 \Gamma(\frac{m-4}{2}) \\ &=& \displaystyle \frac{1}{\Gamma(\frac{m}{2})} (\frac{1}{2})^2 \frac{1}{\frac{m}{2}-2} \frac{1}{\frac{m}{2}-1} \Gamma(\frac{m}{2}) \\ &=& \displaystyle \frac{1}{4} \frac{1}{(\frac{m}{2}-2)(\frac{m}{2}-1)} \\ &=& \displaystyle \frac{1}{(m-4)(m-2)} \end{eqnarray*}\)

となります。したがって、この値を\(E(Z^2)\)に代入すると

\(\begin{eqnarray*} E(Z^2) &=& \displaystyle \frac{m^2}{n^2} E(X^2) E(\frac{1}{Y^2}) \\ &=& \displaystyle \frac{m^2}{n^2} \times n^2 + 2n \times \frac{1}{(m-4)(m-2)} \\ &=& \displaystyle \frac{m^2 (n+2)}{n(m-4)(m-2)} \end{eqnarray*}\)

よって、\(Z\)の分散\(Var(Z)\)は

\(\begin{eqnarray*} Var(Z) &=& \displaystyle E(Z^2) - (E(Z))^2 \\ &=& \displaystyle \frac{m^2 (n+2)}{n(m-4)(m-2)} - \frac{m^2}{(m-2)^2} \\ &=& \displaystyle \frac{m^2 \{ (n+2)(m-2)-n(m-4) \} }{n(m-2)^2 (m-4)} \\ &=& \frac{2m^2 (n+m-2)}{n(m-2)^2 (m-4)} \end{eqnarray*}\)

となります。

よって、F分布の分散を導出することができました。

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