積率母関数とは?モーメントの求め方も解説

[公開日]2016/11/25[更新日]2017/05/22 [カテゴリー]統計用語の解説 Written by  IMIN

積率母関数は、又の名をモーメント母関数といい、確率統計を理解する上で非常に重要な概念です。確率変数\(X\)に期待値が存在するとき、\(X\)の積率母関数\(M_X(t)\)は以下のように定義されます。

$$M_X(t) ≡ E(e^{tX})$$

積率母関数は、例えば\(X\)が連続型で、その確率密度関数が\(f(x)\)である場合、

$$M_X(t) = \displaystyle \int_{ - \infty }^{ \infty } e^{tx}f(x) dx$$

と書き表すことできます。

 
 

積率母関数の名前の由来と存在しない場合

積率(モーメント)母関数の名前は、\(M_X(t)\)が\(t=0\)の周辺の開区間で存在する場合、それが確率分布のモーメントの母関数になっていることに由来しています。

そして、忘れてはいけないのが、積率母関数は存在しないこともあるということです。積率母関数は、積分が収束しない場合存在しません。そのときは積率母関数の代わりに、特性関数を使って計算することが多くなります。

積率母関数の何が便利なのか?

積率母関数を使えば、便利なことが色々あります。例えば、平均や分散、m次モーメントを楽に求められることが挙げられます。

確率密度関数のm次モーメント

\(M^{(m)}_X(t)\)を\(M_X(t)\)の\(t\)での\(m\)回微分であるとしたとき、

\(M^{(m)}_X(t) = E^{(m)}(e^{tX}) = E(X^me^{tX})\)

となります。これが、\(t=0\)の開区間で存在するとき、t=0をこの式に代入すると、

\(M^{(m)}_X(t) =E(X^m)\)

が得られます。これは、確率変数\(X\)の\(m\)次モーメントです。

このように、積率母関数を\(t\)で\(m\)回微分した結果に、\(t=0\)を代入することで、確率変数のm次モーメントを求めることができると分かります。

【例題】 正規分布の平均や分散を積率母関数で求める

積率母関数を使えば、モーメントが簡単に求められます。つまり、積率母関数さえ知っていれば(あるいは求められれば)多くの分布の平均や分散は比較的容易に求められます。例えば、正規分布を例に取り上げて、見ていきましょう。

まず、正規分布\(N(μ,σ^2)\)の積率母関数は以下の式です。

\(M_X(t) ={\mathrm{e}}^{\mu t+\frac{{\sigma}^{2}t^2}{2}}\)

この式のtでの1回微分、2回微分はそれぞれ、

\(M^{1}_X(t) =(\mu+{\sigma}^{2}t){\mathrm{e}}^{\mu t+\frac{{\sigma}^{2}t^2}{2}}\)

\(M^{2}_X(t) ={{\sigma}^{2}}{\mathrm{e}}^{\mu t+\frac{{\sigma}^{2}t^2}{2}}+{(\mu+{\sigma}^{2}t)}^{2}{\mathrm{e}}^{\mu t+\frac{{\sigma}^{2}t^2}{2}}\)

となり、この結果に\(t=0\)を代入すると、

\(M^{1}_X(0) = E(X) = μ\)

\(M^{2}_X(0) = E(X^2) = σ^2 + μ\)

となります。また、

\(V(X)=E(X^2)-{(E(X))}^{2} = {\sigma}^{2}\)

より分散も求められます。

ちなみに、正規分布の積率母関数の求め方や詳しい分散や平均の導出過程は、積率母関数を用いた正規分布の平均・分散の導出に記載したので、気になる方はそちらをご覧ください。

確率変数が複数のときの積率母関数

確率変数が複数になっても積率母関数の概念は使えます。確率変数\(X,Y\)に対して、

$$M_{XY}(s,t) = E(e^{sX+tY}) $$

が\(s=0,t=0\)の開区間で存在するとき、\(M_{XY}(s,t)\)は\(X,Y\)の積率(モーメント)母関数と定義されます。変数が複数になっても、モーメントは以下のように、tやsで微分して\(t=0,s=0\)を代入することによって得られます。

\(M_{XY}^{(m,n)}(0,0) = E(X^mY^n)\)

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