F分布の確率密度関数をカイ二乗分布を用いて導出

[記事公開日]2017/07/16[最終更新日]2017/09/18 [カテゴリー]F分布 Written by  HKRN

当ページはF分布に従う統計量の確率密度関数の導出過程を記しています。

この導出方法は、F分布に従う統計量が、2つの互いに独立なカイ二乗分布に従う確率変数を、それぞれの自由度で割ったものの比で表されることを利用しています。

カイ二乗分布については、カイ二乗分布のわかりやすいまとめにて、まとめました。

※お使いの端末によっては、長い数式が右側にはみ出す場合がございます。縮小や右にスクロール、端末を横にするの動作などで解決する場合がございますので、お試しください。

 
 

F分布の導出にはガンマ関数とベータ関数を利用する

はじめに、F分布の確率密度関数の導出で必要となるガンマ関数とベータ関数の性質を、ここで紹介したいと思います。

まずは、ガンマ関数の性質です。ガンマ関数は、任意の正の実数\(k\)を用いて次の様に表すことができます。

ガンマ関数の性質
 

\(\Gamma(k) = \int_0^\infty t^{k-1} \mathrm{e}^{-t} dt \)

次に、ベータ関数はガンマ関数を用いて次のように表せます。

ベータ関数の性質

\(B(x, y) = \frac{\Gamma(x)\Gamma(y)}{\Gamma(x + y)}\)

他にも、カイ二乗分布の確率密度関数も今回のF分布の確率密度関数の導出では利用しています。カイ二乗分布の密度関数については、こちらの記事をご参照ください。

F分布の確率密度関数の導出

まず、それぞれ自由度\(n, m\)のカイ二乗分布に従う確率変数\(X, Y\)が互いに独立であるとします。

ここで\(X\)と\(Y\)の同時確率密度関数\(f(x, y)\)を考えます。同時確率密度関数とはどういったものなのかは、こちらを参照ください。

いま、\(X\)と\(Y\)が互いに独立であると仮定しましたので、\(f(x, y)\)は次のように表せます。

\(\begin{eqnarray*} f(x, y) &=& \frac{1}{\Gamma(\frac{n}{2})2^{\frac{n}{2}}}x^{\frac{n}{2}-1}\mathrm{e}^{-\frac{x}{2}}\frac{1}{\Gamma(\frac{m}{2})2^{\frac{m}{2}}}y^{\frac{m}{2}-1}\mathrm{e}^{-\frac{y}{2}} \\ &=& f(x) \cdot f(y) \end{eqnarray*}\)

つまり、\(X\)と\(Y\)の同時確率密度関数は、\(X\)の密度関数\(f(x)\)と\(Y\)の密度関数\(f(y)\)の積として表すことができます。ここに、\(f(x)\)は自由度\(n\)のカイ二乗分布の密度関数であり、\(f(y)\)は自由度\(m\)のカイ二乗分布の密度関数です。

次に、\(x\)と\(y\)について、\(z\)と\(w\)を用いて、次のような変数変換を行います。

\( z = \frac{\frac{x}{n}}{\frac{y}{m}},  w = y \)

この時、上記の式を\(x\)と\(y\)について解くと、

\( x =\frac{n}{m}zw,  y =w \)

となります。この変換のヤコビアンを考えると、以下のような値となります。

\( \frac{\partial (x, y)}{\partial (z, w)} = \displaystyle \left| \begin{array}{cc} \frac{\partial x}{\partial z} & \frac{\partial x}{\partial w} \\ \frac{\partial y}{\partial z} & \frac{\partial y}{\partial w} \end{array} \right| = \left| \begin{array}{cc} \frac{n}{m}w & \frac{n}{m}z \\ 0 & 1 \end{array} \right|  =  \displaystyle \frac{n}{m}w \)

 

したがって、\(z = \frac{\frac{x}{n}}{\frac{y}{m}}\)の確率密度関数\(f(z)\)を考えると次のように表せます。ここに\(g(z, w)\)というのは、\(z\)と\(w\)の同時密度関数を表しています。

\(\begin{eqnarray*} f(z) &=& \displaystyle \int_0^\infty g(z, w) dw \\ &=& \displaystyle \int_0^\infty f(x, w) \frac{\partial (x, y)}{\partial (z, w)} dw \\ &=& \displaystyle \int_0^\infty f(\frac{n}{m}zw, w)\frac{n}{m}w dzdw \\ &=& \displaystyle \int_0^\infty \frac{2^{-\frac{n+m}{2}}}{\Gamma(\frac{n}{2})\Gamma(\frac{m}{2})}(\frac{n}{m}zw)^{\frac{n}{2}-1}\mathrm{e}^{-\frac{n}{2m}zw}w^{\frac{m}{2}-1}\mathrm{e}^{-\frac{w}{2}}\frac{n}{m}w dw dz \\ &=& \displaystyle \frac{(\frac{n}{m})^{\frac{n}{2}}z^{\frac{n}{2}-1}}{2^{\frac{n+m}{2}}\Gamma(\frac{n}{2})\Gamma(\frac{m}{2})} \int_0^\infty w^{\frac{n+m}{2}}\mathrm{e}^{-\frac{w(nz+m)}{2m}} dw \end{eqnarray*}\)

つまり、同時密度関数\(g(z, w)\)を\(w\)について積分して、\(z\)の周辺確率密度関数を求めるという計算を行っています。周辺確率密度関数とはどういったものなのかは、こちらをご参照ください。

ここで、\(t = -\frac{w(nz+m)}{2m}\)と変数変換を行うと、\(w\)と\(dw\)について\( w = \frac{2mt}{nz+m}, dw = \frac{2m}{nz+m}dt \)と表すことができます。

これを利用すると、\(f(z)\)の5行目の式における\(w\)の積分式について、次のように表すことができます。

\(\begin{eqnarray*} \int_0^\infty w^{\frac{n+m}{2}}\mathrm{e}^{-\frac{w(nz+m)}{2m}} dw &=& \displaystyle \int_0^\infty (\frac{2mt}{nz+m})^{\frac{n+m}{2}-1}\mathrm{e}^{-t} \frac{2m}{nz+m} dt \\ &=& \displaystyle (\frac{2m}{nz+m})^{\frac{n+m}{2}} \int_0^\infty t^{\frac{n+m}{2}} \mathrm{e}^{-t}dt \\ &=& \displaystyle (\frac{2m}{nz+m})^{\frac{n+m}{2}} \Gamma(\frac{n+m}{2}) \end{eqnarray*}\)

ここに、ガンマ関数の性質を用いて、\(\Gamma(\frac{n+m}{2})= \int_0^\infty t^{\frac{n+m}{2}} \mathrm{e}^{-t}dt\)となることを利用しました。上式を代入することで、\(f(z)\)は最終的に以下の形に求まります。

\(\begin{eqnarray*} f(z) &=& \displaystyle n^{\frac{n}{2}}m^{\frac{m}{2}}\frac{\Gamma(\frac{n+m}{2})}{\Gamma(\frac{n}{2})\Gamma(\frac{m}{2})}\frac{z^{\frac{n}{2}-1}}{(nz+m)^{\frac{n+m}{2}}} \\ &=& \displaystyle \frac{(\frac{n}{m})^{\frac{n}{2}}}{B(\frac{n}{2}, \frac{m}{2})} \frac{z^{\frac{n}{2}-1}}{(1+\frac{n}{m}z)^{-\frac{n+m}{2}}}\end{eqnarray*}\)

よって、F分布に従う統計量の確率密度関数を求めることができました。

ここに、\(B(\cdot, \cdot)\)はベータ関数といい、上式ではガンマ関数\(\Gamma(\cdot)\)を用いて、ベータ関数の性質の1つである\(B(\frac{n}{2}, \frac{m}{2}) = \frac{\Gamma(\frac{n}{2})\Gamma(\frac{m}{2})}{\Gamma(\frac{n}{2}+\frac{m}{2})}\)を利用しました。

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