見せかけの回帰について分かりやすく解説

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このページでは、時系列分析を行ううえで気をつけなくてはならない「見せかけの回帰」について説明します。

見せかけの回帰とは

見せかけの回帰とは、2つの無関係な時系列データに関して回帰分析を行うと有意な相関が表れてしまう問題です。

回帰分析に用いる2つの時系列データがどちらも単位根過程に従うときに現れます。

見せかけの回帰の実例

以下の2つのランダムウォークxt,yt x_{t},y_{t} を用いて、「見せかけの回帰」を理解しましょう。

xt=1+xt1+εt x_{t} = 1 + x_{t-1} + \varepsilon_t

yt=1+yt1+ζt y_{t} = 1 + y_{t-1} + \zeta_t

εtiid(0,1)ζtiid(0,1) \varepsilon_t ~ iid(0, 1)、\zeta_t ~ iid(0,1)に従う。

まずは以下のグラフを見て2つのランダムウォーク、xt,yt x_{t}, y_t の振る舞いを見てみましょう。

黒線がxt x_{t} 、赤線がyty_t を表しています。

2つのランダムウォークを表すグラフ

上記のグラフを見るとxt,yt x_{t},y_{t} どちらもランダムに動いているように見えます。

このxt,yt x_{t},y_{t} 2つの間に有意な関係があるようには見えません。

実際に回帰分析をして確認してみましょう。以下が回帰分析の結果です。

 

回帰分析の結果

xのt値が17.27であることを考えるとxt,yt x_{t},y_{t} の間に有意な関係が表れていると分かります。

確かに無関係であるはずの2つのランダムウォークに有意な関係が現れました。これが「見せかけの回帰」という現象です。

見せかけの回帰の対策

「見せかけの回帰」を回避する方法は主に2つあります。

方法①

xt,yt x_{t},y_{t} それぞれの差分系列Δxt \Delta x_t Δyt \Delta y_t を用いて回帰分析することです。

2つのランダムウォーク、xt,yt x_{t},y_{t} の差分系列Δxt \Delta x_t Δyt \Delta y_t 定常過程に従います。

以下の式変形を見るとΔxt \Delta x_t Δyt \Delta y_t が定常過程に従うことが分かります。

Δxt= xtxt1=1+εt \Delta x_t = x_{t} - x_{t-1} = 1 + \varepsilon_t   Δyt=ytyt1=1+ζt \Delta y_t = y_{t} - y_{t-1} = 1 + \zeta_t

Δxt \Delta x_t Δyt \Delta y_t はどちらも単位根過程ではないので、回帰分析をしても「見せかけの回帰」は起きません。

方法②

回帰式の説明変数にラグ変数、時差のある変数を追加することで「見せかけの回帰」を防ぐことができます。

例えば、yt y_t に対しxt x_t だけでなくxt1 x_{t-1} を説明変数に用いて回帰分析するということです。

カテゴリ: 時系列分析

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