ベイズ統計と仮説検定1~頻度論との違い~

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ベイズ統計の仮説検定を全6回で説明をします。このページは第1回です。

第1回:ベイズ統計と仮説検定【1】~頻度論との違い~
第2回:ベイズ統計と仮説検定【2】~ベイズ統計の基本的な仮説検定~
第3回:ベイズ統計と仮説検定【3】~頻度論の考え方に基づくベイズ統計の仮説検定~
第4回:ベイズ統計と仮説検定【4】~ベイズファクター~
第5回:ベイズ統計と仮説検定【5】~点帰無仮説におけるベイズ流の仮説検定~
第6回:ベイズ統計と仮説検定【6】~ベイズ流仮説検定の問題点~

ベイズ統計にも頻度論と同じように仮説検定が存在します。頻度論における仮説検定は、ネイマン-ピアソンの基本定理に基づいて行われますが、ベイズ統計では頻度論とは違ったアプローチで仮説検定を行います。ここでは、頻度論とベイズ統計の仮説検定の違いについて解説します。

頻度論における仮説検定

まず、頻度論における仮説検定について説明します。

定数・データに関する頻度論の基本的な前提条件は、以下となります。

定数:パラメータ

変数:データ

例えば、日本人男性の平均身長について、以下の帰無仮説をおく仮説検定を考えます。

H0:μ=172H_0:\mu=172

この場合、パラメータμ\muは定数ですから、μ=172\mu=172を満たす確率を出すことはできません。なぜなら確率は確率変数にのみ与えられるからです。

そこで、パラメータを固定した上で、データが得られる確率を考えようとしたのが頻度論における仮説検定です。

上の例で言えば、平均身長はμ=172\mu=172であるかは分からないが、とりあえずμ=172\mu=172と仮定したうえでデータを得た、と考えるのです。

そしてこの前提のもとで、得られたデータの平均身長が190cmだったら、「平均身長をμ=172\mu=172と仮定したのは間違いだったのではないか」と考えていくのが頻度論における仮説検定になります。

以上のことを条件付き確率で表すと次のように表せます。

P(XH0)P(X|H_0)

これは、帰無仮説を満たしている条件のもとで、データが得られる確率であると言えます

ベイズ統計における仮説検定

頻度論に対し、ベイズ統計ではパラメータを変数、データを定数として扱います。

定数:データ

変数:パラメータ

日本人男性の平均身長について、以下の帰無仮説をおく仮説検定を考えます。

H0:μ172H_0:\mu\leq 172

この場合、パラメータμ\muは確率変数なので、平均身長がμ172\mu\leq 172である確率を出すことができます。

μ\muは分布を持つので、μ\muの密度関数をπ(μ)\pi(\mu)とすると、μ\muが172以下である確率P(μ172)P(\mu\leq 172)は以下のようになります。

ベイズ統計の仮説検定_確率分布

このように、ベイズ統計における仮説検定では、仮説を満たす確率そのものを導くことができます。

さらに、これがデータが得られた上での分布(事後分布)であるならば、その確率は条件付き確率を用いて次のように表せます。

P(H0X)P(H_0|X)

これはデータが得られたもとで帰無仮説を満たす確率になります。

まとめ

頻度論とベイズ統計の仮説検定の違いをまとめると以下のようになります。

頻度論における仮説検定

帰無仮説を満たしている条件のもとで、データが得られる確率P(XH0)P(X|H_0)が得られる

ベイズ統計における仮説検定

データが得られたもとで、帰無仮説を満たす確率P(H0X)P(H_0|X)が得られる

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カテゴリ: ベイズ統計

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